2024とVintageについて
残暑の中、国内の納品が終わりました。
2024は初めての試みとして、自分で紡いだ糸によるかぎ針のベストとジャケットを2型製作しています。
1頭で1枚、UK から来た シェットランドとNZ からハーフブレッドという羊です。
手紡ぎ糸は以前にもお伝えしましたが、素材の更なる深みをHIROMI TSUYOSHIに加えたいと思い、紡いでくださる方がどなたかいらっしゃらないかを、竹崎万梨子さんに伺おうとご自宅に遊びに行かせていただいたところ、思いがけず糸紡ぎの体験させてくださり、それをきっかけに自分で紡いでみようとなりました。
その後も竹崎さんに色々と教えていただいてゆっくりですが糸を紡いでいます。
今まだ拙い紡ぎ手ですが、それをそのままニットにのせ、HIROMI TSUYOSHIを表現していこうと思っています。
綺麗な手つむぎ糸は紡いでくださる方がきっと多くいらっしゃると思います。
ですから綺麗な糸というより、そのまま今の自分が出ている糸で刻々と変化していく過程をそのまま出していこうと考えています。
京都のスピンハウスポンタさんに送っていただくUKやNZからきた毛刈りされた原毛は、大切に育てられているのが伝わります。
羊の種類や育った風土で特徴の違った糸を紡げるというのも面白いところです。
羊毛用の洗剤で何度か手洗いして汚れを落とし、お日様で干すとふわふわになります。
それをハンドでカードをかけ繊維をほぐして、足踏みの紡ぎ機で撚りをかけて糸にしていきます。
かせにした糸は水通しして重石で伸ばして干して撚りを止めます。
これで糸は完成です。
きっとまだ砂が残っていたり、わらも一緒に紡がれていたりとあると思いますが、そこはあまり神経をとがらせず編みに出します。
今回はずっと仕事をしてもらっている、非常に技術力の高いニッターにこの糸を託しました。
かぎ針編みで、この凸凹ボコボコ糸をどう左右を揃えて実寸のパターンサイズに近づけるのか、きっとご苦労されるだろうと思いつつ協力していただきましたが、上りとしては今のスピニングの糸としては最高の出来上がりとなりました。
ニッターの収めかたが素晴らしかった。
今までHIROMI TSUYOSHIは頭の中にある完成形に近づけるため、何度も修正していくということが多くありましたが、羊から始まるスピニングに関してそれは通用しません。
どんな羊が手元に来てくれて、どう洗えて、ハンドカードできて、が毎回違います。
紡いでいく過程でも日々の心持ちの違いもあり機械のように同じ糸にはなりません。
そこが魅力的でもあります。
こうあるべき、こうしたい、という自我は吹き飛び、出来上がったものが完成形であり、それをそのまま受け入れるというのは、新たな学びでした。
不揃いの編み目の中に、美しさ、力強さがあり、整いすぎない美というものを発見しています。
そしてVintageについて。
30年以上のニットの多くが手元の桐箱や茶箱に保管されています。
以前も伊勢丹新宿店でのアーカイブ展以降、aimé et noué15周年の記念にアーカイブを出すこともありましたが、基本的にはショップにお出しすることはありませんでした。
HIROMI TSUYOSHIは数名のニッター達と共に、20年以上ニットの可能性を追い続けてきたのも大きな特徴です。
当時のニッターは他界されたり、仕事を続けることが出来なくなったりしてしまった今、このニッター達と作り上げた、すでにVintageと呼んでいいもの、この先Vintageとして成り立ち世の中に出す価値のあるもの、を厳選して少しショップにお渡ししようと思っています。
見直してみて当時のニッターたちの技術力と根気に驚くとともに深い感謝の念が湧いてきます。
作っている時は、皆一生懸命で、居ることが、作ることが当たり前すぎて気がついていませんでしたが、本当にすごいことだったのです。
今のHIROMI TSUYOSHIでは作らない、もう作れないニットが大半です。
ニッターの仕事へのリスペクトから、手作りのものは、当時のプライスからは大きく変え、現在のHIROMI TSUYOSHIの基準にあわせていこうと思っています。
今回は2枚です。
もしお近くでご覧になったら、ぜひお手にとってみてください。
今のニッターの仕事もとても美しいので、決して後ろを向いているわけではありません。
気負いなく変化しながら、この先も自分なりのニットを作りたいと思っています。
自分の琴線にふれる1枚と出会うと、私はとても幸せな気持ちになります。
このホームページをご覧いただいている方々がそんな1枚と出会い、喜び、日々を楽しまれることを心から願っています。
最近のこと、spinning
ここ数年、素材のことをずっと考えていました。
素材の深みをもっと追求したい、本質的でありたいと、昨年末から糸紡ぎを始めました。
全くの初心者ですが、竹崎万梨子さんに色々と教えて頂き、少しずつ紡いでいます。
イギリスやニュージーランドで大切に育てられた羊の1頭分の原毛を洗い、干し、手でカードをかけて紡いでいくという長い工程です。
原毛には(洗った後も)土や藁などが付着していて、その土地の情景や羊の走っている姿など想像しながら作業しています。
まだまだ未熟ですが、その編み地には力があり、この先どのようなニットが作れるのか楽しみにしています。
羊と共に、シンプルに、また違ったHIROMI TSUYOSHIを表現できたらと思っています。
少しずつ1点ものとして制作していく予定です。
ちょうど来月に竹崎万梨子さんの展示があるのでお知らせします。
自分で紡いでみると、1本、1枚の糸を紡ぐ大変さがわかりました。
いつものように、きっと素晴らしいと思います。
Fog 2nd Floor
12月5日-12月8日 12時-18時
itonomari.tumblr.com
2023始まりました
例年にない暑さの中、2023始まっています。
2019年に春夏をやめようと決めてから、4年経ちました。
その間にどんどん自分自身の考え方、物の捉え方、ニッターとの取り組み方が変わり、毎年この時期は、”ああ今年もこういうニットが作れたなと”安堵と感謝の気持ちでいっぱいになります。
20年以上にわたり高度な技術でいつも新たな仕事に挑戦してくれたハイゲージのニッターとの仕事も2023 年 札幌 aimé et nouéの20th
Anniversaryの別注Style3をもって終わる時を迎えました。
今、店頭で大切に販売していただいているハイゲージニットを見かけたら、どうぞお手に取ってご覧になってみてください。
巻き縫いや、みみ使い、布帛とのドッキングなど美しいニット達です。
コレクションにつけている2023というのは23-24年の秋冬用ということではなく、
2023年にHIROMI TSUYOSHIが制作したニットと捉えていただけると嬉しいです。
いつかお渡しできればいいと思い、1枚ストックをのせて作りアトリエに寝かせているStyleもあります。
必要な量しか作らない、無駄なものにならないようにする、というのは1993年にHIROMI TSUYOSHI始まった当初から心がけていることですが、持続可能な社会など大きく価値観が変わった今、やっと時代と少し折り合ったのかと感じています。
少しでも安く、もっともっと、という時代も終わりを迎え、どこでどんな人たちが作っているのか、それは自分自身を楽しく豊かな気持ちにしてくれるものなのか、というところに変化していっていると感じます。
小さい仕事だからこそ守れる豊かさ。
今後もさらに自由に、軽やかに目指すニットを作っていけたらと思います。
手仕事は根気と時間が必要です。
1枚、1枚に編んでくれた方の人となりと、その方のその時、が出ています。
私達はそれを最大限に美しく整えて、ショップにお送りしています。
いつもありがとうございます。
これから始まる秋を、冬を、楽しみましょう!
2023 展示会のお知らせ
早いものでもう3月、春らしい日が多くなりました。
そしてまた、この時期を迎えることができました。
手仕事の奥深さに素材とフォルムを浸透させ、そして着たい!という気持を何よりも大切に考え制作しました。
3月14−16日
展示会を行います。
Professional Buyer only
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2022の製作でHIROMI TSUYOSHIは30年という節目を迎えることができました。
多くの方々のご協力とご支援に心より感謝いたします。
アトリエもニッターも手を動かし1枚に向かいあうという、
始まった当初からの作り方を今も守っています。
小さいからこそ作れる贅沢な物作りがあると思っています。
物の溢れている時代に私は何を手にするか、
どういうものを身につけて日常に喜びを見出すか、
その皮膚感覚を大切にこの先も制作していきたいと思います。
今後のHIROMI TSUYOSHIがどのようなものになっていくのか、
楽しみにしていただけたら
嬉しいです。
2022ニットたちもすでに動いていると聞いております。
まだまだ暑い中、いつもありがとうございます。
どうぞお楽しみください。
津吉裕美